皆さん、こんにちは。このサイトでは、イギリスを中心にした海外での働き方やビジネスについて紹介しています。
今回のテーマは『有給』です。
日本では、2019年4月1日から年5日の有給休暇の取得が義務付けられましたが、そももそ海外、特にヨーロッパの国々は有給ほぼ100%消費が当たり前。
実際、イギリスで働いていて、有給を取り残している人は、全くと言っていいほど見たことがありません。
私は日本で働いていた時の上司に『有休はいざというときのために残しておくもので、全部取るものでは、ないよ』と言われ、『それなら、もう日本では働けない』と思いたって、イギリスにきてしまいました。
いまでも、そんな会社があるのか、わかりませんが、この記事は、日本の有給の在り方・政府の政策に疑問を持っている人、またコロナを受けて新しい働き方を模索している人にとって、何かの参考になれば幸いです。
実は『祝日』は少ないイギリス
イギリスでは会社員の場合、年間、最低20日+国民の休日(年間8日)が有給として支給されます。
政府の最低基準は20日ですが、実際は23-25日くらいの有給数の会社が多いです。
なお8日間は以下の通りです。
祝日名 | いつ? | |
1 | New Year’s Day ・元旦 | 1月1日 |
2 | Good Friday・グッドフライデー | イースター週末の金曜 |
3 | Easter Monday・イースターマンデー | イースター週末の月曜 |
4 | Early May bank holiday・5月バンクホリデー | 5月の最初の月曜 |
5 | Spring bank holiday・春のバンクホリデー | 5月の最後の月曜 |
6 | Summer bank holiday・夏のバンクホリデー | 8月の最後の月曜 |
7 | Christmas Day・クリスマス | クリスマス |
8 | Boxing Day・ボクシングデー | クリスマスの翌日 |
日本の祝日は、年間16日でイギリスの倍!
そもそも、アジア等の文化圏に比べ、欧米文化圏は祝日が少なめ。
ですから、トータルの年間休日数で考えれば、実は欧米人が休んでばかり、というわけではない、、、のかもしれません。
国名 | 有給数 |
日本 | 16 |
イギリス | 8 |
フランス | 11 |
ドイツ | 10-13 |
スペイン | 12-13 |
イタリア | 12 |
フィンランド | 13 |
アメリカ | 11 |
カナダ | 8-12 |
オーストラリア | 10-13 |
タイ | 16 |
韓国 | 14 |
インド | 21 |
イラン | 26 |
アルゼンチン | 19 |
ブラジル | 9 |
『有休』のとらえ方の違い
欧州では、そもそも有休を100%取らせるのが『会社の義務』と定められています。
北欧の国では、有給を取らせ損ねたら会社が国に罰金を払うことになるため、むしろ会社としても休んでくれないと困る、状態です。
日本では、取れなかった有給は給料として返還するならいいじゃないか、という意見もあると思います。
この考え方はイギリスにも存在しますが、『有休を会社に売る』制度には日数に制限があります。
これは『お金で休みを売る』=『お金が足りない人ほど休まなくなる』=『貧しい人ほど、より長時間働かないといけない』=『現代社会の人権の自由を脅かす可能性もある』という、考え方からきています。
さらに例をあげると、イギリスには『現代奴隷法』という法律があります。『奴隷法』というと、現代社会には関係のないことのように思えるかもしれませんが、内容には、長時間の休憩なしの労働、残業も場合によっては、『不当な強制労働』に当てはまります。
そして、この法律はイギリスの法律ではありますが、その会社の商品が海外で作られていた場合、海外にある業務提携先の会社内でも、不当な長時間労働を強いてはいけません。
そうしないと、国外で人権を無視した労働力を雇う会社が増えてしまいますからね。
ですから、もし、日本の機械部品を作る会社がブラックな長時間労働をさせていて、その工場のパーツをイギリスに売る際には、『現代奴隷法』に違反する形になるかもしれません。
また企業のブランドイメージやコンプライアンスの観点からも、海外の企業に製造先の工場の労働状況などもレポートさせたり、誓約書を書かせたりする欧州の企業も増えています。
『会社側』が抱えるプレッシャー
有給がとりやすいのは、法律やコンプライアンスの影響だけではありません。
もっと率直な理由は、会社に対する従業員からのプレッシャーも、強いからです。
ヨーロッパの国では失業率が高いといわれますが、一方で日本に比べて、転職と再就職がはるかに簡単です。
というか、とても『さらさら』っと会社を辞める人が多い。
肌感では平均で5年、2~3年で会社を辞めても、普通ですし、むしろ5年以上とどまっている人は、なにか『より良い仕事を見つけられない事情』でもあるのかと、周りから疑われるレベルかもしれません。
また日本では、基本的に年数=昇給につながりますが、イギリスでは、何年か待って昇給をするよりも、数年のうちに、転職をする方が、昇給よりも大幅に給料を上げることができるため、給料UPのために仕事を転々とする人も、少なくありません。
日本よりは、会社とより対等に交渉ができる環境が整っているといえるでしょう。
欧米の個人主義
日本で、会社全体では有給制度がきちんと整っていても、実際、部署やチームの中で有給を取ることが言い出しにくいケースもあるでしょう。
直属の上司の理解が得られなかったり、人数が少なめに設定されている部署では、好きな時期に、好きな期間の有給申請が難しいこともあるかもしれません。
海外の考え方は有給は働く人の権利なので、会社側がいつ取らなくてはいけないと決めることができません。また基本的に従業員が申請した休みを重要な理由がなく却下するのもNG。
そして会社が休暇の理由や内容の提示を求めることも基本的にNGです。
特別な職種や条件の場合を除き、365日いつどのタイミングでまたどんな理由で会社を休むことも認められています。
ただ、例えば8月の同じ時にチームから5人が休みになるなどの場合は、会社の運営にも支障がでてしますので、従業員は十分前もって、直属の上司に申し出る必要があります。
『早く言ったもの勝ち』なので、イギリスでは初年度に有給がリセットされ次第『年間の休みをすべて予約する』みたいなことをする人も結構います。
休暇中の仕事のカバー
私自身、何年もイギリス式に働いていますが、実際やってみれば、2週間連続で休みを取ることはそんな難しいことではありません。
自分の仕事をやってくれる人がいないから休めないと言う人もいると思います。ですがそれは、従業員の問題ではなく会社の問題というのがイギリスの考え方です。
だれかの仕事を誰もやらず、ほったらかしになる2週間があったとしても、それでも休みを取る権利、そして会社を休みを取らせる義務あるのです。ですから休み中の仕事が進まない、スローダウンするということは、原則としては大きな問題にはなりません。
業界にもよると思いますが、意外と休んでしまえば、それはそれで回っていくものです。
もちろん、同僚がある程度カバーをしてくれますが、
- すべての状況をリスト化し、説明
- 帰ってきたらすべてのメールをチェック
- 戻りました 挨拶メールを出して
といったような、作業だけを増やし、仕事が進まないような事態にはなりません。
取引先から、休み中に呼び出しがかかったり、緊急でミーティングをしてほしいなどと言われることもまずありません。
休暇中の相手に連絡を取るのは、欧州では大変非常識な行為なので、自分がクライアント側であっても、よく考えて連絡をした方が無難でしょう。
『ホリディ』が自由にとれる良さ
欧米式のホリディ文化のいいところは、観光・旅行・レジャー産業業界がめちゃくちゃ盛り上がるところだと思います。
旅行業界では、日本からの海外旅行をする人が年々少なくなっているといわれますが、8月に1週間しか取れない休みを使って、わざわざヨーロッパまで旅行するのが、そもそも非現実的な話。
海外旅行はお金、時間に余裕のある人だけのものでであるのが、日本ですが、欧米では、年齢、時間、予算にかかわらず、さまざまなスタイルの海外旅行を楽しみます。
ただ逆を言えば、ホリディにお金をかけすぎて、買い物にお金を残さない人もいますので、日本より小売業は小売業が苦戦する傾向があるとも言えるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
欧米では長期休みがとりやすいというイメージをすでに持っていた人は多いかと思いますが、背景にはいろいろな事情があることが、紹介できていれば幸いです。
国民休日が多いなど日本の方が充実している部分もありますが、コロナを受けて、日本にも欧米式の働き方、考え方が少しづつ浸透していく時代も近いかもしれませんね。