このブログでは、ロンドンの日本食事情をレポートしています。
最近、丸亀に激ハマりしています。
丸亀製麺のイギリス進出はコロナ前から話題になっていたのですが、コロナで外食産業が落ち込み、しばらくニュースを聞いていませんでした。そんな中、ふと気づいてみたら、丸亀はすでにロンドン内に4店舗をオープンし、各店舗ともなかなか盛況のようです。
この記事では、丸亀=”Marugame”のイギリス進出の様子と人気の理由を、現地の写真をあわせて、ご紹介します。
日本の店舗との違い
店の造りは日本とそこまで変わらないようです。
気になるのは、いたるところにこちらの小麦粉の大袋が飾られているところ。
うどんの材料である小麦粉は日本から仕入れた日本産。原材料のクオリティをお客さんにアピールする良い方法ですね。
英語版のメニュー名
さらにロンドンならではの工夫もあります。その一つがメニュー名。
そもそもイギリスのお客さんは日本の『うどん』と言うものをよく知りません。うどんで、一番初めに思い浮かぶのは中華やタイ料理で定番のSTIR FRIED NOODLE (焼うどん)の事。
なので、『かけうどん』、と『ぶっかけ』の違いから、説明をしなくてはいけません。さらに『ぶっかけ』=Bukkakeは、とても発音がしにくい。
そこで、ロンドン丸亀では、『ぶっかけうどん』はBK(ビーケー)と名称変更されています。
メニュー内容の違い
ベジタリアン・ヴィーガンの人は魚から取ったのだしを食べることができません。そもそも欧州では、カツオや煮干しのように、魚の風味が強い食べ物が苦手な人もかなり多くいます。そのため、かけうどんなどの人気メニューには野菜だしバージョンが用意されています。
また天ぷらは、欧州で手に入りやすいパプリカ、ズッキーニ、アスパラガスなどの野菜が使われています。一方日本国外では手に入りくいレンコン、シメジ、シイタケなどは扱われていないようです。
日本と変わらないサービスをそのまま
一方で日本と変わらないところもあります。ビュッフェ形式であること、天ぷらをその場で上げてくれること、薬味が無料な事など。
特に、ロンドン住民としては、お水が無料なことが、ありがたいですね。
ロンドンで丸亀が人気の理由
ロンドンでなぜ丸亀が受け入れられているのでしょうか?
その理由の1つは質の良いものが安いから。
残念なことですが、ロンドン、そして欧米の外食産業は、値段と質が比例しがちです。
日本を含めたアジアの食文化圏では、B級グルメや屋台フードなど、価格を押さえながらも調理法や味付けの工夫によって、高級レストランと変わらず満足感の得られる外食が多く存在します。消費者も値段だけで店を判断しません。
一方、欧米の外食文化では『安い物には、安い理由』があり、食材の質やサービスを妥協することで、価格競争に対応するという現実があります。
そんなイギリスで、そもそも『価格のたかいもの』とされている日本食。
丸亀では品質の高い小麦粉を日本から仕入れ、その日お店で作られたばかりのうどんを提供しているわけですから、人気にならない理由がありません。
この写真は丸亀リバプールストリート店の目と鼻の先にある現地経営の日本食料理店です。丸亀とは正反対にがら空き状態です。
このレストラン、コロナ前は普通にお客さんの入っている店でした。
このレストランもそうなのですが、通常ロンドンで安めの日本食(定食など)を食べると、一品£10~£13(約1,500円)かかります。さらに、飲み物やスターターなどをつけると大体1食£20~£30(約4,000円)かかってしまいます。
定食屋レベルでも、この値段。これがロンドンの普通の食費です。
これに比べると、丸亀はかなりリーズナブル。
日本の店舗と比べれば、それでも高額設定に感じる人も多いかもしれません。それでも、この物価の高いロンドンで、釜揚げが£3.45(約550円)からスタートしているのはありがたい!!
量が少なめと感じる人もいるかもしれませんが、他のレストランで食べるよりは必ず安くつきます。
成功のカギは?
成功している理由は大きく3つあると思います。
立地が絶妙にいい
飲食店の成功のカギはまず立地。日本食レストランは、Westend(ウエストエンド)と呼ばれる観光客やデパートの多いエリアにまず出店をすることが多いのですが、丸亀はSouth Eastと言われるエリアに集中。(Oxford street店を除く)
1号店であり、最大店舗のリバプールストリート店は、ロンドンの金融ビジネス街に近く、ランチタイムには手軽なランチを求める会社員でごった返すエリアです。また銀行員・金融関係者を含む高所得者層が多く集まり、新しい食文化に敏感な層が多いエリアであること、日本人や日本に関係のある企業で働く人が多いエリアであるのも、功を奏したといえるでしょう。
同エリアにはイタリアの高級食材デパート“Eataly”(イータリー)の大型店舗もあります。この店も2020年の開店の際には200人以上の行列ができた人気店です。
ロンドン外からの観光客が多い繁華街を選ばず、舌の肥えたロンドン民のリピーターを増やし、口コミでお客さんを確実に増やしているようです。
計画をあきらめなかったこと
ロンドンは外食チェーンが欧米進出の足がかりとして選ばれる都市。日本食チェーンの進出計画の話は実は結構よくあるのです。ですが、中国やアジア文化圏への進出とは違って、法律、規制、距離や文化の違いなど、障害が多かったり、利益が見込めないという理由で、計画がとん挫することがほとんど。
途中で諦めてしまう企業さんがとにかく多いのが、残念ながら現実なのです。
丸亀もコロナが発生した際に『もしかしたら諦めてしまうのではないかな』という不安もありました。今まで以上に、時期を乗り越えても、ロンドンにお店をオープンしてくれた丸亀製麺に感謝です。
ちなみに日本食チェーンでロンドン進出が一番早かったのは、ラーメンの一風堂というイメージがあります。ほかにカレーのココイチもありますね。
『こだわり』をそのまま残したこと
日本人がお店に入ったら『全然違う』と思うかもしれません。が、それでもかなりの部分で、日本らしい要素をそのまま残していると思います。
現地スタッフの方もとても手際が良く、店内も日本を思わせるサービスが行き届いています。
海外進出に合わせてローカライズしてしまうところと、全く日本らしさがなくなり、そのほか大勢の店に埋もれてしまうということがよく見られます。日本の良さとして残すところをきちんと残しているからこそ、現地のお客さんにその良さが届いているように思います。
これからの課題
丸亀ロンドンを訪れて思ったことですが、これからの課題は『うどんの知名度が広がっていくこと』ではないかと思います。
お店は盛況ですが、お客さんの頼むメニューはやはり照り焼き丼とカツカレーに集中しているようです。うどんを一切頼まず、天ぷらだけを食べに来ているお客さんもいるようです。
うどんはつるつる滑るため欧米人にとってはかなり食べにくい食べ物です。また欧米では『だし』を味わうよりも、照り焼き、カレー味のような、濃い味が好まれます。そして、うどん・そばのような音を立てて食べる料理は、いまだに食べにくく抵抗があるという人もとても多いのです。
また欧米のファーストフードと言えば、サンドイッチやハンバーガー。ハム、肉、サーモンなどタンパク質系の食材と、パンなどの炭水化物を組み合わせて食べるのが習慣になっています。
日本のうどんのように、麺、つゆ、薬味だけで、味を楽しみ、おなかもいっぱいになる、というのは、幼い頃から日本のうどんを食べている日本人ならではの楽しみ方だといえます。
しかし、このままMarugameの人気が普及していけば、Sushi、Ramen、Katsu curryにつづいて、BK(Bukkake)が、イギリス人にとって当たり前の食事になる日も、将来来るのかもしれませんね。
最後に、ロンドン丸亀でいただいたメニューの写真をご紹介します。